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伝雪舟筆「富士三保清見寺図」の修復が完成しました。 (2004.01.13)

伝雪舟筆「富士三保清見寺図」(縦43.2cm、横101.8cm・図1)は、富士と三保松原、古名刹として有名な清見寺を中心とした景観を、横長の画面に描いた水墨画です。
永青文庫では、住友財団の「2001年度 文化財維持・修復事業助成」を受け、本作品の修復を京都・岡墨光堂にて実施し、2003年3月に完成しました。

この作品は、画面右上に「雪舟筆」の署名と「等楊」の印があるものの、筆使いの遅滞などから、雪舟自身が描いた原画ではなく、雪舟の活躍期に近い室町時代に写された模本と考えられています。しかし、原画の図様はかなり忠実に伝えられていると考えられ、原作の現存例がきわめて乏しい雪舟の絵画のなかにあって、雪舟の描いた富士図に最も近い富士図として、雪舟研究において非常に重要な作品と位置づけられています。

掛軸形式の日本画は、「本紙」という絵が直接描かれている紙の裏側に、何枚もの和紙を糊で貼り合わせることで、本紙を補強しています(図2)。「裏打ち紙」と呼ばれるこれらの和紙は、数十年経過すると、本紙と同様に劣化して弱くなります。また掛軸を掛けるたびに、開いたり、巻いたりという動作を繰り返すので、画面に横折れが入りやすくなります。このため、数十年に一度、全ての裏打ち紙を除去して、新しい裏打ち紙に交換しなければなりません。

図1 伝雪舟筆「富士三保清見寺図」
図2 本紙の裏側に裏打ち紙を打っているところ

この「富士三保清見寺図」も経年劣化により、画面全体に大小様々な折れが生じ、折れ山の部分から紙に亀裂が入ったり、紙の一部が剥がれ落ちたりしていました(図3・図4)。

図3 「富士三保清見寺図」(修復前) 図4 修復前の部分図。本紙に生じた横折れや亀裂

そこで軸装を解体し、本紙の折れや亀裂に補修を施し、裏打ち紙の交換する修復を実施しました(図5・図6)。その結果、画面の折れや亀裂が目立たなくなり、また汚れやシミが薄くなったため、画面全体の印象も以前に比べかなり明るくなりました。さらに、取り扱いや展示も安全におこなえるようになりました。  
また、修復の過程でおこなった科学分析により、本紙の材質が非常に薄い竹紙(厚さ0.078mm)であることも判明しました。このように、肉眼による観察だけではわからない新たな情報が得られることも修復の利点のひとつです。

修復後の「富士三保清見寺図」は、2004年4月6日〜5月9日に熊本県立美術館で開催される「豊麗なる彩り−細川家伝来の絵画の名品」展で初公開される予定です。

図5 伝雪舟筆「富士三保清見寺図」(修復後) 図6 修復後の部分図。横折れや亀裂が目立たなくなった



写真提供:(株)岡墨光堂

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